週刊ベースボールONLINE

都市対抗2023

【都市対抗2023】リスク管理で「負けない野球」を展開 指揮官の考えが刷り込まれているENEOSの司令塔・柏木秀文

 

栄光と挫折、再建を経験


ENEOSの正捕手・柏木は安定感ある守備力で、ディフェンスを固める[写真=菅原淳]


 第94回都市対抗野球大会は7月14日から25日まで東京ドームで熱戦が展開される。開幕まで注目チーム、選手を紹介していく。

 左袖には黒獅子エンブレムが輝いている。都市対抗の前年チャンピオンの証し。さらには12個の星。都市対抗史上最多12度の優勝を示す、ENEOSの誇りだ。

 名門を指揮する大久保秀昭監督はかつて2006年から同チームを率い、08、12、13年に都市対抗優勝へと導いた。14年限りで退任し、母校・慶大の監督に就任した。ENEOSは15年こそ東京ドームの地を踏んだが、16年から4年連続で西関東二次予選敗退。低迷脱出のため19年12月、大久保監督が再登板した。慶大監督の任期を残しながらも、愛着ある会社のため、古巣に戻ってきたのである。

 就任3年目シーズンの昨年、9年ぶりの都市対抗制覇を飾った。強豪復活の一因として外せないのが、司令塔の働きである。捕手出身の大久保監督が最も重要視する扇のカナメを託したのは、柏木秀文(城西国際大)だった。

 柏木の入社は2011年。12、13年の都市対抗連覇を経験した一方で、先述のように、4年連続予選敗退という屈辱を味わっている。大久保監督が復帰した20年は、5年ぶりの都市対抗出場で初戦突破。21年は8強、そして22年は黒獅子旗奪取と、栄光と挫折、再建のすべてに関わってきたことになる。

 投手の良さを引き出す巧みなリード。インサイドワークも抜群であり、ディフェンスの中心として、勝利に貢献してきた。決して目立たないが、献身的な活躍が認められ、入社11年目で初の社会人ベストナインを受賞した。

黒子に徹して連覇に挑戦


 柏木は野手最年長の33歳。入社12年目の今季も不動の正捕手として躍動し、4月のJABA四国大会優勝で、社会人日本選手権の出場権を手にしている。都市対抗予選は前回優勝チームによる「推薦出場」で免除。6月9日には西関東第1代表・三菱重工Eastとのエキシビジョンマッチを戦った。柏木は5回までマスクをかぶり、新戦力を含めて3人の投手をけん引。チームは5対1で勝利した。

 試合後に取材すると、落ち着いていたのが印象的である。

「この12年、良いことも、悪いことも見てきました。学んだのは、リスク管理です。若いころは勝つことだけを考えてきましたが、いかに『負けない野球』を展開していくか」

 大久保監督の考えが、刷り込まれている。「勝てば投手の手柄。負ければ捕手の責任」。黒子に徹している。黒獅子エンブレムを着け、自身2度目の都市対抗連覇への挑戦である。

「前回の連覇はベンチでしたので、今大会、メーンでかぶることになれば、自分自身、楽しみです。ENEOSは若い投手も多いので、逃げない声かけをしていきたいと思います」

 ENEOSは7月14日の開幕試合(18時開始)でバイタルネットと対戦(1回戦)する。ベテランの柏木がいる限り、チームの根幹が揺らぐことはない。ベンチの大久保監督も、背番号33を着けるベテランを「グラウンドの指揮官」として、全幅の信頼で送り出す。

文=岡本朋祐
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング